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作品概要
那波まおによる同名漫画が原作で、英勉監督によって2018年に実写映画化された作品です。
3次元リア充美少女と2次元オタク男子という、間違っても恋愛が始まりそうにないと思われるふたりの恋愛が描かれています。
だれもが予想することでしょうが、この恋愛、普通の恋愛のようにまともに始まりまともに進展する可能性は低いです。恋愛当事者の二人と、二人を取り巻く周囲の人間たちを巻き込んで、様々なエピソードが展開していきます。
おすすめしたいのは
これから恋愛に突入予定の人、ただいま恋愛真っただ中の人、過去に経験し卒業した恋愛を思い出として大切にしている人、さらには、ごたごた騒動満載で結構明るくてしかも驚くべき感動の展開もしっかりと用意されている恋愛映画でも観て、日頃の疲れやストレスからバーッと解放されたいという人にもおすすめします。
メインキャスト
中条あやみ(五十嵐色葉=高校3年生のリア充)、佐野優斗(筒井光=高校3年生のオタク)、清水尋也(高梨ミツヤ=光をアニオタ・コミュ障・引きこもりと見下す同級生)、恒松祐里(石野ありさ=ミツヤと交際したい同級生)、上白石萌歌(綾戸純恵=1年生のオタク女子)、ゆうたろう(伊東悠人=光の親友でオタク)、荒木飛羽(筒井薫=光の弟)、三浦貴大(馬淵慎吾=色葉の主治医)、神田沙也加(魔法少女えぞみちの声)、濱田マリ(筒井紀江=光の母)、竹内力也(筒井充=光の父)
この映画の見どころ
なんといっても、リア充とオタクという、スタンスも嗜好も思考も志向もすべて正反対、真逆、水と油、犬と猿(?)としか思えない高校生男女の間に、あろうことかまっとうな恋愛を誕生させようという、常識破りの映画です。「心の中をほんのり照らすようなささやかな純愛」的な美的感覚は最初はとりあえず捨てておく方がいいでしょう。
この恋愛、とにかく落ち着いた穏やかな状態で進展するはずはありません。「さあ、どんなゴタゴタが発生するのか」と待ち構えるくらいのつもりで、この異色恋愛カップルとそれを取り巻く友人や家族など周りの人間たちの関わり合い、そしてそこから巻き起こるエピソードを楽しむことをお勧めします。そうするとその後、結末に至るまでの間に繰り広げられる新たなそして劇的で感動的な展開を、十分にかみしめつつ味わうことができると思います。
3D彼女 リアルガール ネタバレ
いきなり「ツッツン、私と付き合って。」
とある高校の教室の自分の席に座っている筒井光に向かって、五十嵐色葉が「ツッツン、私と付き合って。」と交際を申し込む場面からこのスートリーはスタートします。そのあとシーンは、この場面に至るまでの経緯を解説するため3日前までさかのぼります。
筋金入りの2次元オタク高校生である光は、ひょんなことからリア充美少女色葉と二人で学校のプール掃除をさせられることになります。実は、光は色葉について噂だけは聞いたことがありました。それは「不良だとか、男グセが悪いとか、女受けが悪いとか、いいのは顔だけで性格は最悪だとか・・・」ということでした。そんな噂を持つ3次元の女と同じ空間にいて同じ空気を吸っているだけで息が詰まるという光。そんな光に対して色葉は「彼女いないの?そもそも女子と話さないの?」と何のわだかまりもなく気軽に問いかけてきます。「筒井」じゃ呼びづらいからと勝手に「ツッツン」と呼ぶことにします。さらに「ツッツンさあ、恋とかした方がいいよ。」と気さくにアドバイスまで。さらにさらに「なんなら私が付き合ってあげようか。」とも。
ここまで言われるとさすがに光はからかわれていると感じます。しかも相手にしたくない3次元の女に。そこで「ふざけんなよ!笑顔でズカズカと人の心に土足で入り込んで!でもってグシャグシャに踏み荒らして!それでこっちがどんな思いしてるかなんて1ミリも考えてない!気まぐれでそんなこと言って、俺が飛び上がってヤッホーイって喜ぶとでも思ったのかよ!そんな顔してりゃなんでも思い通りになると思うなよ!」と長尺の激昂型セリフを一気にまくしたてます。
それに対して色葉が返した言葉は意外や意外。心から申し訳なさそうに「そうだよね。」しおらしすぎるほどの返事でした。これには光も「え?」と完全にトーンダウン。色葉は「冗談のつもりだったんだけど・・・ごめんね。」といってその場を立ち去ります。
この時の色葉の言葉と表情と振る舞いが、見る側の気持ちを「二人に普通の恋愛を成就させてあげてもいいかな。」という方向へと導きそうな、そんなシーンです。
光、自己嫌悪
その場に残された光の心に突き刺さったままの、色葉の想定不可能だった言葉と態度。3D女子拒否症ゆえに思わず浴びせた自分の言葉とのギャップ。「俺が悪いのか。俺のせいなのか!?」光は自分を責めます。教室で、オタク系の友人伊東も光を責めます。「君のせいだ。」その伊東から「3次元女子の情報網を駆使する社会的制裁を甘く見ちゃだめだ!謝るんだ!」と説教されて、それに従うことにします。
そして色葉が帰宅途中に立ち寄った書店でこっそり色葉の動向をうかがいながら謝るタイミングを探ります。と、そのとき、色葉が書店員から万引き犯の疑いをかけられてしまいます。そこで窮地を救うべくしゃしゃり出た光は、色葉が学校を出てからずっと彼女の行動を見てた、彼女は犯人じゃないと、見事に弁護して色葉の潔白を証明します。そしてその見返りに(?)ストーカーとして通報される羽目になりあわてて逃げ出します。この一連の光の行動を色葉は優しいほほ笑みと眼差しで見つめます。
ここもやはり二人の恋愛の成就を見たい気持ちにさせる場面となっています。
そして再び「私と付き合って。」のシーンへ
前日、書店でのゴタゴタで色葉にごめんなさいを言いそびれた光は、今度こそ失敗しないようにとの友人伊東の指導のもと、教室の自分の座席で謝罪の練習をしています。そこへ現れた色葉。そしてこの映画の冒頭シーンのセリフ。「ツッツン、私と付き合って。」
教室内が一瞬静まり返ります。そのあと、3次元世界での融通が全く聞かない光の口から出た言葉は、直前まで伊東の指導で何度も発声練習していた「ごめんなさい。」
これには教室内一同総崩れ。事情を知らない色葉は「そうか。」と一言だけ、優しい表情で言って立ち去ります。
その後、伊東もクラスの女子石野ありさもこの奇跡的な場面で流れを全く読めない光に非難轟々。意識低すぎ筒井くん。非難されてやっと状況を理解し始めた光は慌てて色葉の後を追います。そして校舎の渡り廊下で「付き合うという言葉の意味についてお聞きしたいんですが・・・」と尋ねると「それは・・・彼氏になって・・・ってこと。」と色葉。
ところが、このせっかくのチャンスに2次元魔法少女えぞみちが登場していじめの可能性を光に警告。光のリア充女子拒否症を呼び起こすのです。「そうだ。これは新手のいじめだ。俺に奴隷契約を結ばせ、身も心ももてあそぶつもりなんだ。」との疑念がめらめらと心に湧き上がってきます。
が、結局、色葉に「どうすんの?」と聞かれて「彼氏になれば許していただけますか。」とまたもや流れを読めない質問をしてしまう光。
「よくわかんないけど、付き合うってこと?」と色葉。
「甘んじて受け入れます。」と光。
恋愛の始まりとはとても思えないような、いびつな形で交際がスタートすることが一応決定します。
そして「じゃあ、半年間よろしく。」と色葉。半年間ってどういうことでしょうか。なにかありそうです。ところがそれに対して「ながっ!」と光。3D世界のニュアンスを読み取れない光に半年間の意味を尋ねる能力は期待できません。
「短い間だけどよろしくね。」と言ったとき一瞬憂いを帯びた真顔になった色葉。その言葉の真相を確かめるにはもう少し時間が必要なようです。
光と色葉の交際スタート
とにかく交際はスタート。二人は学食で同じテーブルについて二人きりで昼食。まわりのみんなはそれを驚きと興味の眼差しで遠巻きに見ています。その時突然色葉が床に倒れ込みます。慌てて駆け寄る光に色葉は「大丈夫。馬淵先生のところに・・・」と消え入るような声で訴えます。色葉を背負って病院まで全力疾走する光。結局病室のベッドの上で容態が回復した色葉。主治医の馬淵は光に単なる貧血と説明し、それを聞いた光は涙を流して安心しますが、色葉の表情には少しだけ暗いかげりが・・・
光が出て行ったあと馬淵が、色葉の新しい彼氏が今までの彼氏とずいぶんかけ離れていることを指摘します。やはりリア充女子との不釣り合い加減は一目瞭然。しかし色葉は「でもねえ、ツッツンはなんか違う気がする。」と主治医も同級生も家族も視聴者もまだほとんど見抜いていない光の魅力を見出しているようです。
さて初めてのデートは色葉のリクエストにより光の家でということになります。2次元オタクの部屋を見られてはこの恋も終わりだという家族の心配をよそに、色葉はフィギュアやアニメのよさを素直に受け入れます。そして「魔法少女のように魔法が使えたらいいな。」この言葉にも何か大事な意味が含まれていそうですが、光にはそこまで深く洞察する能力も余裕も今のところはありません。でも、デートのお別れに初めてのキス。恋愛の熱は順調に高まって行くかに見えます。
ところがところが、光が着ぐるみを着て遊園地でアルバイト中に、色葉がなぜか主治医馬淵と一緒に楽しそうに歩いていくのを見かけます。それを見て「馬鹿だな、俺。一人で勝手に浮かれてただけか。」と激しく落ち込みます。そんな中、光は高校の中庭で1年生のオタク女子綾戸純恵に出会います。初対面にも関わらず、共通の趣味で話が大いに盛り上がり、お互いの心の中に何か通じるものを感じます。特に純恵は初めて独りぼっちから脱出できた喜びもあって光に強い好感を抱いたようです。しかし、その様子を色葉はしっかりと目撃していたのです。
結局、お互いが疑念を抱きあう関係になってしまいます。
そのあとゴタゴタもいろいろとありますが、結局お互いの誤解が解けてとりあえず一件落着。雨降って地固まる感じで、ふたりの恋愛はやっとまともな方向へと軌道修正されていきそうな感じにはなります。
ロマンティックな純愛の雰囲気で語り合い見つめ合い、心がしっかりとこもったキスをするシーンもありますが、そこらあたりはあまりしつこくネタバレ記述を続けても雰囲気ぶち壊しになるので、控えておきます。
そして、ここまでのストーリの総まとめのような形で開催されるハロウィンパーティー。ストーリーが新たな展開へと突入していくための区切りではないかと予感させる大盛況。その中で突然色葉は自分たちの交際が始まって半年が経ったことを悲しげな顔で、光に語りかけます。「半年」が意味することを全く知らない光に、色葉はとうとう深刻な秘密を打ち明けます。
色葉は脳に重い病気を抱えていてその手術をしなければならない時が来たというのです。成功するかどうかかわからない、だからさよならなんだと光に告げるのです。そして「私のことは忘れて。」と言って去っていきます。本当に姿を消してしまうのです。
それから5年後
社会人となった光。オタクの地位(?)を捨て、スーツに身を包み、バリバリの営業マンとして活躍する日々。かつて自分の部屋の棚を埋め尽くしていたフィギュアはすでにすべて処分しています。それでもやはり折につけ心の中によみがえってくるのは色葉との理不尽な別れ。5年の歳月をもってしても絶対に消し去ることができない思い。
5年前に色葉の姿があった場所へ、営業で近くへ出かけたついでに立ち寄ってみます。あの時のことを改めて振り返りながら、しみじみとその景色を眺める光。するとそこになんと色葉の姿があったのです。
しばらく絶句の後「よかった・・・ほんとよかった・・・」とつぶやきながら色葉の方へ近づいていく光。それに対して怪訝そうな表情の色葉が発した言葉は「どちらさま・・・ですか。」まさかの返事に焦る光は「おれ!筒井!ツッツン!高校ん時の!」と詰め寄りますが、色葉は「ごめんなさい、よくわからなくて。」という言葉を残して走り去っていきます。
取り残されてたたずむ光の姿を見つけて、後からきた馬淵が呼びかけてきます。そして場所を移動して喫茶店で、姿を消した後の色葉のことを話します。手術後色葉は昏睡状態に陥ったということ、数か月後に意識は回復したが重大な記憶障害が残ったということ。手術より前のことはほとんど覚えていないこと、当然光のことも覚えていない、つまり現在の色葉はあのころの色葉ではないということをとつとつと語ります。
話せば思い出すかもしれないという光を、馬淵は「だめだ。18年分の空白を抱えて生きるつらさがわかるのか。」と冷たく突き放します。さらに「記憶を失ってからも僕はずっと彼女に寄り添ってきた。君の半年間とは違う。彼女のことを思うなら忘れてくれ。」と光の心にくぎを刺した後「僕と色葉は結婚する。」と衝撃的な決定打を放って店を出ていきます。
「あのう・・・」別の日、色葉を見かけた場所でベンチに腰かけて憂いに沈んでいた光を、今度は色葉が見かけて声をかけてきます。「あなたは私の友達だった人じゃないですか。私知りたいんです、自分のことを・・」しかし馬淵にくぎを刺されていた光は悲しみをかろうじて抑えつつあえて本当のことは封印します。「この間はすいません。人違いでした。」
やがて高校時代からの親友の伊東から、色葉が結婚式を挙げることを知らされます。しかし光はこの時は「色葉が幸せになろうとしているのだから。」と答えるにとどめます。再び色葉と同じ世界で一緒に生きることはもうできないのでしょうか。
やがて馬淵と色葉の結婚式の日が訪れます。そして式の最中、会場に突然乱入してくるのは光の親友伊東、光に恋心を抱いたことのある綾戸純恵、かつてはオタクの光を見下していた高梨ミツヤ、ミツヤと交際したがっていた石野ありさの4人。高校卒業後も交流が続いていたようです。そして4人がそれぞれに高校時代の色葉にかかわるエピソードと思い出を色葉に向かって語り、その締めくくりに石野ありさが「あんたはほんとにそこにいていいの?」と問いかけます。しばらく続く沈黙。さらに伊東が色葉のそばまで歩み寄っていき、「これ、ご祝儀。ずっと会いたがっていた友達から。」と持ってきたものを手渡します。そして「お騒がせいたしました。」と4人は会場を出ていきます。その後、式は予定通り進行するのですが、色葉の顔には何かが気にかかっている表情が浮かんだままです。もしかしたら失くした記憶が少しづつ戻ってきているのでしょうか。
ところで先ほど手渡されたご祝儀の箱。中に入っていたのは、高校時代の交際中に光が色葉にプレゼントとしてあげたフィギュアの折れてしまった杖だったのです。それを光が修理する約束をしたまま果たせず、結局そのままになってしまっていたものです。それを見た色葉の、何かを思い出そうとするかのような表情。やはりもしかすると記憶が戻りつつあるのかもしれません。
そのころ自宅にいた光は、悩みに悩み、考え抜いた末に「やはり俺は色葉のことは忘れられない。俺は色葉がいる世界にいたい、たとえ色葉の世界に俺がいなくても。」という強い気持ちを確認します。そしてアニメの中の魔法少女えぞみちが教えてくれた「3D世界ではリセットはできなくてもリスタートはできる。」ということを心に言い聞かせて、自宅を飛び出し駆けていきます。
同時に、式の途中でなにか記憶が戻って来たのか、どうしても確かめたいことが心の中によみがえってきたのか、色葉もウェディングドレスのまま式場を飛び出して駆けていきます。
二人が出会う舞台設定は突然、色葉が記憶を失う直前にふたりの別れの場所となった、にぎやかにダンスが繰り広げられるあのハロウィン会場に様変わり。そこで二人はついに対面。
光にはもう、色葉の記憶が戻っていてもいなくても関係ありません。もうどうでもいいのです。戻っていなければまたゼロからリスタートする覚悟はできています。そして、光は色葉への思いのありったけを全身全霊を込めて投げかけます。(ここはもう文字にはしません。観ていただくのみです。)
色葉は光の言葉をしっかりと受け止めながら、光のそばまで歩み寄ります。そして涙がつたう光のほほにやさしく手を当てながら色葉がささやいた言葉は・・・
「泣かないで、ツッツン。」
二人の熱い抱擁でこのストーリーは幕を閉じます。
※「色葉に記憶を取り戻させて結婚を思いとどまらせる行動は、結婚式当日じゃなくてもっと前にやっといた方がよかったんじゃないの。結婚式は高額な費用が掛かるんだから。」というツッコミは、感動とその余韻がおさまった後におこなっていただくことをお勧めします。